対談:支援者×利用者×雇用者
ザックリと!対談の内容はこんな感じ!
- 障害者雇用の「現場」に精通するF氏が当事者が社会に出て仕事をしていくためには、本人及び障害者就労の支援員に何が求められるのか。本当のコトを語った。
- 当事者には、一見地味な作業も、正確さと気遣いが求められる。資格を持っている=仕事ができるではない。
- 当事者は障害者雇用で仕事をする上で、「状態が不安定になってはいけない」わけではなく、「不安定になっても対処ができ、復調ができる人材」が理想である。
- 支援者は、言わば営業マン。「配慮」といって企業側に責任を負わせるような態度は「営業マン失格」なのではないか。
- 支援者は企業に対し、当事者の得意・不得意、特性上の注意点、定着支援についてを具体的に説明できることが本来の姿である。
~①障害者福祉において、働くことを見据えた支援が弱いという話を受けて~
F:やっぱり教育的アプローチって必要になるし、道徳心とかそういう話って必要になるじゃないですか。
要するに、赤信号を渡ってはだめよっていうルールをちゃんと教えないと駄目だっていうことです。
あなたは病気だからといって赤を渡ってもいいというわけではない、っていうのをちゃんと言える支援者じゃないと社会に参画できるための強い精神力と言うか、いちいち、いちいち、へこたれるんじゃなくて、これが当たり前だから、当たり前の世界に生きるためには何が必要かなという考え方で行かないとやっぱ生きていけないじゃない
MO:うん うん。
F:最近の話題だと満員電車に乗ったことない子がイメージで話なんかしてもしょうがない。
じゃあ、よしやってみよう!一緒にやるとか、そこから生まれるいろんな不満とか緊張が出てくるから、その一個一個に、ここはこうして、ってやらないと働き続けられないじゃない。
だって、本当は一人で行くわけでしょ。
2年か3年か後には旅立っていかなければいけないわけだから、そこを考えていくと全然、不十分ですよね。
就職して終わり、ってそれはリクルーターのお仕事だと思う。
MO:エージェントですよね。
F:エージェントとしてあるんだったら、もうちょっとスキルスペックの部分っていうのは、夢物語じゃない、資格だけじゃないスキルスペックを持っていてほしい。
資格を持ってるからってパソコンができるわけじゃないんだから・・・(笑)
MO:みんなMOSばっかり持っていても、しょうがないですもんね(笑)
F:そんなものはいいから、じゃあメールひとつ言われたらポンと打てるだけの能力があるのか、とか。
まあ、柔軟性っていうのも多少はないとやっていけないでしょう、ていうところは誰も見ていないよね。
そこを全部、会社に配慮っていうのは正直ビジネスマンじゃないなっていう。
就労支援員っていうのは、言い方を換えれば営業マンなわけですね。
「支援所のメンバーさん、おうちいい子いません?オタクはどうですか?こんなことやれますよ!ちょっと、ここだけ注意して欲しいけども、これ以外はやれますし、後のことはバッチリ、フォローするんで!」っていうのが本来の仕事でしょ。
営業マンとしてどうか…とすると腕が浅すぎるでしょ。
そんな商品買わないよって、良い商品ですってだけ言って、何がいいのって言ったら答えられない。
じゃあ、こうやって欲しいんだけどって言ったら、それは会社さんの配慮でみたいな…。はぁ?ってなりますよね。
だから、ここが一つえらい弱いんだと、当然就労後に至っては、ほぼみんな未知数なんだろうなと私は思っていますけどね。
あの…、よくビジネスって例えば事務職一つ取ったって、仕事の内容も福祉関係者が説明できますかって言われた時に説明できないんですよね。
MO:確かに…。就労移行に通所中のときは、ほとんどYZさんだけでした。説明ができたのは(笑)
F:でも、仕事って経理事務って言われた時に「あの…、電卓叩くんですよね?」って言っちゃう子がいますけど(笑)電卓を叩くようなことは、今はほとんどシステムが入ってるから、ほとんどない。
そういうことじゃなくて、それが合ってるかなって言う点検だったり、チェックだったり、監査に引っかかっちゃうかもしれない、っていう地味だけど、数をこなして、かつ正確に行うのが経理が本来やらなきゃいけない仕事。
一つ数字が合わなかったら帰れないという職業だったりする。
そういった…、例えば事務職でもいろんな種類があるわけで、パソコンの資格がある、だから事務職ができる、なんておかしい、雑すぎるって私は思います。
むしろ、事務職は手作業が多いし「手作業と気遣いの職業」ですよね。
これはジョブコーチ仲間も言ってましたけど、そこら辺のトレーニングから職場でやれって言うのはあまりにも横暴すぎる。
給料を払っている状態でトレーニングを9割入れろっていうのは、本来そうはいかないよ。
せいぜい、五分じゃないと割に合わない。でも、安い給料は嫌だって皆さんは言うでしょ?
支援者だってそうやって言う…。そりゃ生活するためにお金は必要、それはわかる。
だったら、どこで間違えているんだろう、と考えると多分、就労のフェーズになった時に切り替えがうまくいってないっていうのが正直な話なのかなっていうところで、それがうまくいかないから、2:6:2[※1] の話で、6割ばっかりに結局、集中しちゃう。
ここの切り替えがうまくいってる人は最初から上の2割に近い状態でスタートするから。
MO:そうですね。
F:上の2割の人はやっぱりモチベーションも高いし、もちろん失敗して落ち込むし、メンタルダウンも傷病が悪化することもあるけど、でも復調できるから…。
復調できることが本来武器なんですね。障害者就業っていうのはいつかどこかでやがて不安定になるんですね。
MO:いやーなるほど。
F:だから不安定にならないですっていう商品じゃなくて、不安定になっても自分で戻せますっていうのが商品性だから…。
障害者就労で手帳を持っているというのは、やっぱり不調になってきた時は少し時間をくださいとかそういうのが必要なの。
MO:それで言うと、結局叶わなかったんですけど、定着支援で支援者の方と話す時、うちの会社の全体の欠席率を調べてもらおうと思ったんです。
そして私の欠席率も調べてもらおうと思ったんですね。
私はどれぐらいの位置にいるのかということを踏まえた上で話さないと…。
あなたが言っていることはおかしいんだと。
あの…、本当に精神障害の人に対して「大丈夫ですか?」と言ってばかりいると、そっちに引っ張られてしまう。
心配に引っ張られてしまうというか…。
私は、それに対して非常に憤りを感じやすいんですよね。
なぜかと言うとそこが自分の弱いところだと自覚しているんですね。
そこに対して対処しようという努力をしている人に対してパッと上から来て「体調が心配だからさ」って言われると取り組みについて見てください、それを踏まえた上で意見を下さいと思うんですよね。
その中で、「復帰する」っていう感覚を持ってくれている方がいらっしゃる…、手帳の有無で話してしまうのは申し訳ないけれど、Fさんのように持ってない方がそういう考えでいらっしゃるというのは非常に心強いですよね。
一緒に仕事をしていくとか、やってく上で「じゃあ大丈夫だね。MO君なら今ちょっと落ちてるけど、戻してくるから大丈夫だと思う。どこまで行ったら戻せないというアラートはMO君なら出してくれるはずだから大丈夫」という感覚が信頼関係に繋がって仕事もどんどんしやすくなっていくと思います。
それが、ちょっと強引に結びつけるかもしれないですが「対等」につながるのかなと思います。
その人の特色として理解していただいた上で信頼してもらったら、いい関係が築けると思います。
F:そうね~。
MO:どちらかというと私たちは体調が悪くなる人のことをわかるわけだから、そこのマネジメントができる…、それは大きな武器になるので、そうやって組織を作っていければいいのかなっていうのは思います。
うちの会社って、そういうのができてはいるので環境として恵まれてはいますよね。
Fさんが思う、障害者雇用における、仕事のできる/できない、の感覚的なレベルの割合。
上(できる)、下(できない)はともに2割と少なく、その中間の6割にほとんどが属しているという認識。